親になってみなければ
若い頃に親から「親になってみなければわからないよ」と言われて妙な気持ちになったことが誰しもあることと思います。もちろん僕もありましたが親になってみると「確かに・・・」と思うわけです。これは知識から分析等をして親という存在そのものを理解できるかどうかではなく、距離を置いていられる対象からその物になってしまったという違いなのでしょうか。親になった瞬間に親と自分との距離がゼロになるわけです。
少々違うかもしれませんがレコーディングもそんな感じがしています。もちろんこれまで40年以上のレコーディング経験があります。デビューアルバムにはじまってスタジオミュージシャンなんかもさせてもらいましたし、その後のオリジナル録音をしてきた数でいえばかなりになります。しかしこれらは演奏する側として携わってきたわけで、録音エンジニア側ではありませんでした。
ここで「エンジニアのことはエンジニアになってみないとわからない」というつながりになります(笑)。まずはスタジオ。スタジオを作るということは建物も機材も大変な投資が必要です。そして優秀なエンジニアがいなければならないんです。
テープで録っていた頃にはレコーディングや編集をする上で高度な職人技は必要とされました。コンピューターミュージックのようにUNDOがありませんからね。
ですから録音した中編成の弦の音を後から聴いたら、小さくクシャミの音がした・・・、なんて本当にあった話です。すでにミュージシャンは帰ってしまったし、マイクのセッティングもバラしてしまっているし。録り直すならば予算も含めて1からやり直すしかありません。
実は自分で宅録をするようになって、録るということがどれだけ大変なことなのかがわかってきました。今深掘りしているのがボーカルです。一昨日?もっと前からな?ボーカルのレコーディングとミックスに関してあれやこれややっております。
自分の理想とする音があるのですが、どうしてもそうならないんです。とどのつまりスタジオ(機材)とエンジニアが肝であることはわかりますが、今の自分でできる状況でやれることを深掘りすることは、思わぬ宝を発見すすことにもつながると思いやっています。
違うマイクの録り音の比較やそれぞれのマイクに対しての口までの距離やマイクプリの設定等々チェックをしていました。結果は今のところこれまで録ってきたシステム構成が最善であることがわかってきました。
ちょっとした発見はオン(マイクから10センチくらい)で歌った方がなぜか歌いやすいと感じることでした。マイクからの距離は音量と音質にかなり影響するのでそう感じたのかもしれません。
この歌いやすいということはとても大事です。良い歌はどんな高価な自在にも勝る説得力があるんです。とにかくセルフレコーディングはどこをとっても自分に返ってくるのでなかなかな世界ですねえ(汗)。