神様の絵の具

友人の友人が牧師と結婚して諏訪に行くという話を聴いてなぜか記憶に残っていました。牧師のご主人は良家出身のエリートらしく赴任する教会へスポーツカーで乗りつけたと聞きました。良家出身もエリートもスポーツカーも本当かどうかわかりませんが、後日二人の写真を見せてもらうとご主人はすらっとした二枚目で、奥さんも魅力的な美人。ちょっと昔の映画の主人公のような二人に見えました。

順風満帆な牧師生活が続くはずでしたがご主人に突然の病が見つかりました。それは癌でした。病は進行し脊髄が損傷して激しい痛みに襲われるようになり、止む無く牧師職を退き、都内へ戻ってきました。

その牧師の名は能登一郎さんです。ある日新宿区のにある総合病院へ入院している能登さんをお見舞いに行きました。部屋へ入ると彼は眠っているようでした。「神様の絵の具」はその時の事を歌った歌です。出来上がった曲を能登さんに聴いて許可をもらい、CDに収録する事となりました。

彼が話していた言葉で忘れられない言葉があります。それはちょうど東京へ戻った頃のこと、「今は聖書も読む気持ちになれないで漫画ばかり読んでいます・・・」。今でもこの言葉を思い出すとこみ上げるものがあります。牧師としてはどんな時でも希望を持っていなければいけないのかもしれません。それが神様を信じる事でしょう、と言われる方も大勢いらっしゃると思います。

でも僕も娘が脳腫瘍で闘病している中で同じような気持ちになった事を忘れません。そんな中でも僕は頑張って「必ず神様が治してくださる」と言っていました。ある時それを聴いた女性牧師が「あんまり自分で決めないほうが良いですよ」とおっしゃったんです。とっさに僕は何を言われているのかわかりませんでしたが、今はその意味がよくわかるようになりました。

弱さを排除する事が信じる事ならば僕は今クリスチャンではなかったのかもしれません。勝利って何?勝つって何?。それは悪の力への勝利だよって言われるでしょうが、僕たちは得てして自分の望みが叶う事が勝利だと思ってしまう愚かな者です。もし自分が勝つ事で誰かに負けが生じるんだったらそんな勝利なんていらなくないですか。

ちょっと感情的になってしまいましたが、能登さんは様々な葛藤の中を美しく神様の元へ旅立たれました。美しい。きっとそれは神様のおっしゃる通りにという事なのかなと思います。

 

 

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Posted by buchi