おもしろ話(4)

06/24/2023

もう20年くらい前になるでしょうかスリランカへ行く機会がありました。他の仲間はすでに発っていて、僕はひとりシンガポール経由でスリランカへと向かいました。シンガポールまでは普通の旅でしたが、シンガポールでスリランカ行きの飛行機を待つ人達は肌の色が浅黒く彫りの深いインド系?の感じがする人たちでした。

数時間の飛行で飛行機はコロンボへ無事着陸しました。空港からホテルまでは仲間が準備してくれたタクシーで移動することになっていたのですが、空港のロビーに出ると何人もの人が僕を取り囲んで、「荷物を持つよ」、「待ってたよ」、「タクシーはこちら」、的な感じで迫ってきました。当初はこの人達が僕を迎えに来てくれたのかなと思ったのですが、これまでの経験から推測するとこれに乗っかるのはまずいので、落ち着いて辺りを見回しました。すると僕のネームプレートを持った人が立っているのを見つけたので、その人に案内してもらいタクシーへ乗り込みました。するとそのタクシーの運転手さんが「どちらまで?」というので、僕がホテル名を告げると運転手さんは「ああ、そのホテルは知っている」と答えたんです。運転手さんが「そのホテルは知っている」って、あなたは僕を空港からそのホテルまで送り届けるという約束で雇われて来たんじゃないの?と素朴に思いました。さらにこの車に乗って大丈夫かな?とも思ったんですが、荷物も積み込んだしそのまま出発してもらいました。

実はその時の僕はホテルがどこにあるのか、どれくらい時間がかかるのかを知らないでいたのですが、まあ車で10分も走れば着くんだろう、くらいに軽く考えていました。ところが20分を過ぎ30分を過ぎても一向に着く気配がありません。おまけに走っている道には街頭がなく、時々すれ違う対向車のライトも薄暗く、なんとも不気味な感じがしました。そのうちに僕は「あれ!この車ってさっきから左折しかしていないんじゃない?」と思ったんです。ひょっとして同じところをぐるぐる回っているだけで、ホテルになんぞ向かっていなくて「僕は誘拐されてるんじゃんないの?」という疑いまで浮かんできました。その後も車は走り続け、40分を過ぎたくらいでやっと少し明るい感じのする通りへ出て、遠くにホテルの名前も見えてきました。

僕は誘拐されてはいませんでした(笑)。無事にホテルへ着きホッとしてトランクから荷物を降ろしていたら、運転手が「料金はいくらいくらです」というので支払おうとすると、ホテルから仲間が駆け寄ってきて「払わないでください、すでに支払いは終わっていますので」とのことでした。間一髪で2度払い回避することができました。

僕は東南アジアへ行けば中国のお金持ちに、アメリカ西海岸へ行けば南米系のお金持ちに見えるんだそうです。ですからスリランカでもお金持ちに間違えられて、誘拐もあり得るかもと思ったわけです。スリランカをディスっているわけではないのでごめんなさい。スリランカは政治的には危険な地域がありますが、僕が行った当時はそれほど治安が悪いという感じはしませんでした。そしてインド洋の真珠と言われるほどの美しい国でした。

さてスリランカで目立ったのは日本の中古車です。なので日本人の僕には見慣れた車にたくさん出会いました。マイクロバスに『なんとか幼稚園』と書いてあったり、トラックに『なんとか青果店』と書いてあったりするんです。最高だったのは大型バスの行き先が『新宿駅西口』でした。これには大笑いました。

僕は首都コロンボからバスに乗って避暑地のキャンディーというところへ向かったのですが、道中なんと運転手が赤信号を無視して走って行くんです。僕が「赤信号を止まらなくていいんですか」と聞くと「おまわりさんがいなければいいんです」と答えが返ってきました。「そうなんだ〜」じゃなくて「違うやろ!」ですよね。まあところ変わればってやつですね。

オフの時間に「象に乗ってみませんか」と言われたので、「そりゃあ乗ってみたいです」と答えたのですが、その像は裸像で、背中に人を乗せるカゴが一切付いていませんでした。電車のプラットホームみたいな高いところから象にまたがって、僕がつかまれるところはわずかにある首の後ろのたてがみのような部分だけです。像が歩き出して僕はなんとかつかまっていましたが、像が下り坂に差し掛かった時には肝を冷やしました。僕から見ると像の鼻が巨大な滑り台のようになり、ここで手を離したら僕はそこを滑り落ちて死ぬ!と思ったので、必死にわずかなたてがみにしがみついていました。今書いていても手が汗ばむほどの恐ろしい体験でした。

あれおもしろ話じゃなくなったかな。スリランカの話はもっとあるので次に続きますね。